山火事で「花粉が飛ぶように放射性物質が飛散する」と報道

2017年12月5日

2017年52日、「紀伊民報」がコラムにて、東京電力元社員の知人からのメールを紹介するというかたちで、429日に発生した浪江町の森林火災によって「花粉が飛ぶように放射能汚染が飛散する」と報道しました。

 画像の出所

「紀伊民報」Web版記事(201751日)
http://www.agara.co.jp/column/mizu/?i=332963

経過

・メールの送り主とされる東京電力元社員による、同内容のツイートがTogetterにまとめられています。

元東電社員「浪江の山火事で放射能が!」「ワカメの味噌汁を飲もう!」。
https://togetter.com/li/1106018 

・福島県は52日更新のHPにて、過去の事例やモニタリングポストの測定結果から、「周辺環境に影響が生じている事実は一切ない」と否定しました。
http://web.archive.org/web/20170502152431/http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01010d/0502monitoring.html

・「福島民友」は53日付紙面にて、「浪江の山火事デマ拡散 専門家ら『まどわされないで』」として、森林火災のほか、同じ情報の拡散について、専門家の見解を含めて報じました。
http://web.archive.org/web/20170503015022/http://www.minyu-net.com/news/news/FM20170503-169269.php

・福島県が否定したあとの55日、漫画家の雁屋哲氏によって、同じメールが情報源とみられるこの情報が拡散されています。
http://kariyatetsu.com/blog/1910.php 

・ロシア公営放送「スプートニク」の公式ツイッターが5月5日、福島県からの否定にも関わらず、紀伊民報同様に放射能拡散の危険性を訴えて拡散させました。このツイートおよび記事に使われている写真は、過去に同メディアがカナダの森林火災を報じた際に使用された写真の使い回しでした。

 

・「紀伊民報」は59日付紙面にて、数多くの批判や福島県内紙から取材があったことをあかし、「杞憂であり、それによって多くの方に心配をかけ、迷惑を与えたことになる」として陳謝しました。一方で、「花粉が飛ぶように放射能汚染が飛散する」といった情報についての訂正はありませんでした。出処となったWeb版記事は、現在も訂正されないまま掲載されています。 

・「紀伊民報」によるコラムの掲載から陳謝についての流れは、Togetterにまとめられています。

紀伊民報の記事がデマと断定される
https://togetter.com/li/1106177

紀伊民報のデマと「デマにまどわされないで」と発信する福島民友記事の比較
https://togetter.com/li/1106690

情報の検証

森林火災による放射性物質の拡散は、2016年に福島県内で発生した山火事を調査した林野庁によって、森林外への飛散がなかったことが確認されています。

また、福島県が発表しているとおり、火災発生後の429日~51日の周辺モニタリングポストの値を見ても、放射線量が増えていることは確認できません。

参考リンク

浪江町井出地区の林野火災現場周辺の放射線モニタリングの結果
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/namie-rinyakasai-201704-05/

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