Fact Check 福島について

ご挨拶

みなさま、はじめまして。芹沢一也と申します。株式会社シノドスの代表取締としてアカデミック・ジャーナリズム「SYNODOS」(http://synodos.jp/)を運営するとともに、一般社団法人シノドス国際社会動向研究所の代表理事として、日本にリベラルな社会を確立するためのプロジェクト(http://synodoslab.jp/)を行っております。 

福島をめぐるデマを根絶し、デマにもとづく差別をなくしたい。こうした思いから、シノドス国際社会動向研究所は「STOP福島関連デマ・差別」というプロジェクトを立ち上げ、そのプロジェクトのもとでこの「Fact Check 福島」をはじめました。

野放しにされる悪質なデマ

「福島の人とは結婚しない方がいい」 ――こんな言葉を、社会的影響力が強い公人が口にしました。
「私は、子どもが産めますか?」―― こんな問いを、福島の子どもが震える声で発しなくてはなりませんでした。 

被曝の影響は次世代の子どもたちに決して遺伝しない。このことは、広島と長崎のデータから明らかになっています。 また、そもそも福島では、世界平均を上回るような被曝をした住民がほとんどいなかったことも、実測データからすでに判っています。 

ところが、現在にいたるまで放射線被曝そのものによる健康影響が1例も出ていないのにもかかわらず、次世代までをも巻き込んだ深刻な差別につながる悪質なデマが、野放しにされています。 

相次ぐデマ・差別事件 

たくさんの福島・放射線に関する「デマ・差別」事件が起こっています。新聞やテレビで取り上げられた事例を列挙してみましょう。 

・2015年10月 双葉郡のNPO法人が取り組む清掃イベントに、反原発運動団体などから「人殺し」などの誹謗中傷・脅迫が1000件以上寄せられた。 

・2016年2月 韓国での東北の物産展示会に、地元環境団体が抗議して中止に追い込まれた。主催者は「福島のものを並べたことへの謝罪」を要求された。 

・2016年3月 福島大学の教員や立命館大学の学生らによる米国での講演に、地元反原発団体が「安全PRをしに来た」などと誹謗中傷した。 

・2016年6月 九州の生協「グリーンコープ」がイベント告知にて東北6県から福島県を除外し、「東北5県」と表示。組織内では「福島はレントゲン室」などと書かれた会報誌も出回っていた。 

・2016年7月 マレーシア人写真家が避難地域の住宅等に無断・不法侵入、撮影をしてCNNやガーディアンなどに掲載された。 

以上は氷山の一角にすぎません。メディアに載りきらないほど日常的に、この6年間、農家や漁師、福島に住む母親たちなどに対する嫌がらせが続いているのです。 

いまだに「福島の農家は農業をやめろ」という差別発言、「福島の海産物が産地偽装されて出回っている」などというデマを、大手メディアで発言する識者すらいます。

繰り返される報道被害

メディアにおいても、誤報や根拠薄弱な「ほのめかし」型報道が続いてきました。 

・2016年9月25日 毎日新聞「1.63ベクレル/リットル(表層水)」誤報事件。複数の箇所の「検出下限値」をすべて足した数値を報道し、あたかも現在、高濃度汚染があるかのよう報道。後に事実誤認を認めて訂正した。 

・2016年12月28日 朝日新聞「小児甲状腺がん、県外でも重症例」報道。事故由来の小児甲状腺がんが多発していると主張する特定の民間団体の活動を紹介しながら、あたかも事故由来の小児甲状腺がんが増加と広がりを見せているかのようにほのめかした。 

こちらも氷山の一角です。ほかにも、テレビ、雑誌などによる「福島は穢れている」「福島の人は病気になる」という意図をもった「ほのめかし型報道」は、もはや枚挙に暇がありません。

2014年の美味しんぼ「鼻血」事件、事実を一部恣意的に切り出して報じた朝日新聞の吉田調書事件以後も、被災者・被災地への「セカンドレイプ」は日々続いています。 

本来であれば、こうした状況を是正する役割をこそ、メディアは果たすべきです。ところが、「デマ・差別」につながるネガティブな報道は無制限に行ってきたのに、それを打ち消すようなポジティブな情報については、ニュースバリューがないと判断したのか、報道を怠ってきました。 

たとえば、UNSCEAR(国連科学委員会)報告書では東電原発事故由来での甲状腺がんは増えていないし、今後、増える見込みもないことが繰り返し述べられています。また、福島の米の全量全袋検査で、毎年1000万袋ほどの検査をしても、法定基準値超えの米が出ない状況が続いています。こうしたことは、福島の地元メディアでは報じられることですが、東京発の情報では切り捨てられてきました。  

3・11の被害、一次被害+二次被害(社会的被害)

2011年3月11日。福島県は、地震と津波、そして原発事故という複合的な災害に見舞われました。その上にさらに今、「デマ・差別」という深刻な被害を受けています。 

福島県で今も続く「3・11の被害」は、「一次被害」(実害)と「二次被害」(社会的被害)に分けられます。 

一次被害とは、地震・津波の死傷者、高齢者等の避難過程の死傷者、家屋・コミュニティの喪失、事業者の営業停止、作物からの放射性物質基準値超えによる出荷停止などです。 

二次被害とは、避難経験による精神的ストレス、避難の長期化による健康への影響、ストレスと家族や市町村など多くのコミュニティの分断、放射線への不安がもたらすストレス、福島出身者への偏見や差別、いじめ、およびそれらに対する不安などです。

福島における震災関連死は約2100人。地震・津波などによる直接死約1600人よりも多く、今も増え続けています。これは他の被災県に比べて突出して多く、とくに震災関連自殺が問題になっています。事故直後、放射線の危険性を煽る報道による農漁業従事者の自殺もありました。 

また、相馬市および南相馬市で避難経験を持つ人の糖尿病罹患率が1.6倍に増加しています。放射線不安やストレスから食生活のバランスが崩れたり運動が減ったりしていることの影響と考えられています。子どもの肥満も一時、全国1位になりました。体力低下を懸念する医師も多くいます。 

福島で小さな子どもを育てる母親のうつ傾向、および虐待認知件数も明確に急増しています。 

二次被害の深刻さは災害直後よりもむしろ、時間が経ってなお猛威をふるうことにあります。 

震災直後の苦難を乗り越え作付けを再開した農家であっても、たとえば2016年12月1日にNHK仙台放送局の番組「被災地からの声」では、遠方に住む子供から「セシウムが入っているからいらない」との言葉を受け、稲作をやめてしまった方が紹介されていました。 

こうした出来事を裏づけるかのように、福島県での自殺者数は原発事故後3年以降に急増しています。 

二次被害への対策の遅れが、このような被害を拡大させていると言えるでしょう。

こうした危機的状況は、もちろん複合的な原因によってもたらされています。しかし、その一番の根幹にあるのは、間違いなく野放しにされている悪質なデマです。それゆえ、何より解決しなくてはならないのは、福島に関連するデマを撲滅することなのです。 

そのためには、いったいどのようなデマが流布し、そしてどのような差別が横行しているのかを知り、災害の一次被害の陰に追いやられ続けた莫大な二次被害の実情を明らかにする必要があります。 

「Fact Check 福島」が取り組もうとしているのは、この課題に他なりません。

「Fact Check 福島」は何をするのか? 

1.「デマ・差別」事例を収集する「Fact Check」 

上にあげたものは、「デマ・差別」の事例のごく一部にすぎません。これまで「デマ・差別」の被害にあった人びとの多くは泣き寝入りをし、加害者は言いっぱなし、やりっぱなしでいることができました。 

一方、「デマ・差別」を継続的に追いかけている人は少なく、存在しても、それぞれの頭のなかに記憶されているに過ぎませんでした。これでは、「デマ・差別」の被害が社会で共有されず、「無かったこと」とされてしまいます。 

「デマ・差別」の事例を集め、いつ、どこで、だれが、どのような「デマ・差別」をつくってきたのか明らかにすることで、その傾向を把握し、解決のきっかけをつくることを目指します。

2.この6年で分かってきた科学的知見や情報をまとめる「基礎知識」 

この6年で多くの科学的知見が明確になってきました。 

「福島の放射線のことは誰も答えがわからない」「専門家によって答えがバラバラなんだよね」「多様な議論が大切だ」「漠然とした不安を科学的な見解で否定するな」といった定型句を、しばしば耳にします。 

一見もっともらしい文句ですが、それはすでに解決している問題を、あたかも解決していないかのように見せかけたり、誤った事実認識に基づく「デマ・差別」を正当化・拡大したりする役割を果たしてきました。 

明確になった科学的知見として、私たちが共有すべきものは何なのか。その知見や情報をまとめることで、誰でも参照できるようにするとともに、「デマ・差別」が「デマ・差別」たる根拠を明確にすることに役立てます。 

3.専門家インタビューや調査レポートなど「記事・寄稿」 

明確になった科学的知見はどのような手続きを経ているのか、まだ科学的に明確ではないことがあるとして、どこまで見通しが立っているのか、など、専門家の言葉を通して多くの人が理解するきっかけをつくります。 

「Fact Check 福島」をぜひ応援ください!

芹沢一也(一般社団法人シノドス国際研究所代表理事)
開沼博(立命館大学衣笠総合研究機構准教授)
服部美咲(フリーライター)
林智裕(フリーライター)

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