福島空港発のチャーター便がキャンセル

2018年2月9日

2017年224日、韓国済州(チェジュ)航空が職員や乗客の懸念を考慮し、仁川空港と福島空港を結ぶチャーター便の就航計画を取り消したことが報道されました。

報道によると、

チェジュ航空が来月18日と20日に福島発仁川行のチャーター便を出す計画が発表されると、社内外で論議が起きた。

チェジュ航空は福島空港や韓国外交部が公開する放射線測定値を根拠に安全に問題がないと主張したが、乗務員だけでなく、チェジュ航空の別の路線を利用しようとしていた乗客からも放射性物質に対する懸念の声が上がった。

と、チャーター便の取り消しに至る経緯が説明されています。

韓国・チェジュ航空 福島便就航計画を撤回= 放射能懸念で(「聯合ニュース」2017.2.24http://m.yna.co.kr/mob2/jp/contents_jp.jsp?cid=AJP20170224005200882&site=0400000000&mobile

経過

・キャンセルに先立つ2017222日に配信されたRecord chinaによる翻訳記事によると、福島空港へのチャーター便運航について、

同運行をめぐっては、放射能への懸念から乗務員らが搭乗業務を拒否し、会社側が一方的に登場する乗務員を選抜するなど、両者間に摩擦が生じていた。

と、キャンセルに至る内情が説明されています。

また、同記事には、

(チェジュ航空側による)「福島空港(0.07μSv/h)よりソウル(0.09μSv/h)の放射線数値の方が高い」「福島便の運行に何ら問題はない」という説明に対し、韓国原子力安全技術員放射能分析センターのユン・ジュヨン所長は「単純に韓国の方が放射能数値が高いから、日本の方が安全だという主張は間違っている」と指摘している。

環境保健市民センターのチェ・イェヨン所長も「2011年の福島原発事故以降現場調査を行っているが、50キロ離れた福島市内でも基準値の数十倍を超える放射能が測定されたことがある。航空機自体の放射能汚染も問題だが、福島で搭乗する乗客と貨物の汚染についても相当重要になってくる」と話している。

との識者の意見が紹介されているほか、韓国のネットユーザーから、

「国民の健康を考えてほしい」「自国民の保護のためにもこれは間違っている」「もうチェジュ航空には乗らない」「チェルノブイリが今でも出入り禁止区域であるのには理由がある」

などのコメントが寄せられたことが明らかにされています。

福島便運航で物議の韓国LCC「ソウルの方が放射線数値が高い」と説明(「Record china2017.2.22
http://sp.recordchina.co.jp/newsinfo.php?id=164520&ph=0

201733日の参議院予算委員会において、公明党の若松謙維参議院議員が本件について質問しています。

岸田外務大臣(2017年3月当時)は、

ご指摘の点、大変重要な事であり、私は日韓の外相会談におきまして、風評被害、日本産品の輸入規制撤廃問題について問題提起をして善処を求めてきましたが、引き続き正確な情報発信に取り組んで、こうした問題の解決に努力を続けてまいりたいと考えております。

と答弁しています。

チェジュ航空による福島空港忌避問題が国会で取り上げられる(渡辺康平公式ウェブサイト)https://goo.gl/UT9NAo

・チェジュ航空は利用空港を、福島空港から仙台空港へ変更することを提案しました。しかし韓国へのツアーは結局、チェジュ航空ではなく日本航空が代わりのチャーター機を出すかたちで、予定通り福島空港発着にて行われました。

福島空港発を維持 チャーター韓国便 日航に変更(「福島民報」2017.3.9http://www.minpo.jp/pub/topics/hotnews/2017/03/post_1342.html

情報の検証

・本件では乗務員も被曝を懸念して搭乗を拒否したとありますが、そもそも航空機による移動の際には宇宙からの放射線によって、地上よりもはるかに高い被曝をします。高度によって線量は異なりますが、普段から25μSv/h程度の被曝はめずらしくありません。これは福島空港の0.07μSv/h2017年2月時点)をはじめとした、避難区域外の福島県内各地と比べても、ケタ違いに高い数値です。

※なお、100mSv(100,000μSv)以下の被曝では、健康への影響は他の影響にかくれて観測できません。航空機搭乗による被曝リスクも通常、懸念する必要はありません。


http://fukushima-radioactivity.jp/pc/

RecordChina記事にある「単純に韓国の方が放射能数値が高いから、日本の方が安全だという主張は間違っている」というユン・ジュヨン氏の発言は、たとえ福島の方が低線量であっても危険だというのであれば、科学的にも論理的にも合理性がまったくありません。

http://www.caa.go.jp/jisin/r_commu/pdf/141201_shiryou_2.pdf

・また、チェ・イェヨン氏による「2011年の福島原発事故以降現場調査を行っているが、50キロ離れた福島市内でも基準値の数十倍を超える放射能が測定されたことがある。航空機自体の放射能汚染も問題だが、福島で搭乗する乗客と貨物の汚染についても相当重要になってくる」との発言もまた、誤解と思い込みによるものです。

「基準値」が具体的に何を差しているのかが不明ですが、過去において「測定されたことがある」としても、現在の空間線量による被曝リスクとは無関係です。現在、言及された福島市も含めた福島県内の避難区域外地域で、被曝による健康被害が懸念される場所はありません。

「航空機自体の放射能汚染」については、事故由来の放射性物質はほとんどがすでに沈着しており、空気中に大量に漂っているわけではありません。また、福島空港での空間線量が0.07μSv/hであることから、空気中のみならず周辺の放射性物質の量自体が、ほかの土地と変わらないことがわかります。航空機が汚染されるということはあり得ません。

「福島で搭乗する乗客と貨物の汚染についても相当重要になってくる」については、原発事故後、福島で暮らしている住民を実測調査しても、実際に被曝した量は内部、外部ともに、健康被害を恐れる必要のない、きわめて低いものであったことが明らかになっています。