「100万人に300人の割合で、福島の子どもたちが甲状腺がんに。」と謳ってクラウドファンディング

2018年3月5日

福島の子どもたちを対象に「放射能の心配なく自然豊かな沖縄の離島、久米島での自然体験や食養を目的とした保養プログラム」を実施している民間団体「沖縄・球美の里」が、参加する子どもたちに甲状腺検査を独自に行なっています。

同団体が保有する甲状腺検査の機器が老朽化したためと称して、新しい甲状腺検査機器購入を目的としたクラウドファンディングが行われ、2018年3月に目標額を達成しました。

沖縄保養プログラムに参加する福島の子どもたちに甲状腺検査を。(Ready for
https://readyfor.jp/projects/kuminosatomed

主な問題点

・甲状腺検査は検査される当事者にとってメリットがきわめて小さい反面、デメリットが非常に大きいことがわかってきています。専門性が高いために一般の方々への誤解も発生しやすく、医療倫理の問題、被験者への人権問題にも大きく関わるきわめてデリケートな検査です。また、その特性上、検査結果を第三者がチェリーピッキングしたり恣意的に悪用することで、政治的な主張や商業的行為に容易に利用しやすい性質があります。

・福島での放射線被曝のリスクが高いと主張して同団体が実施する保養プログラム自体が、福島の現実に反した主張と前提にもとづいています。「被曝による健康リスクを減らすための保養」の必要性はありません。

情報の検証

同団体が資金を集めたクラウドファンディングでの概要には、多くの誤った情報が並んでいます。

・「震災から2017年6月までの6年間にすでに193人の小児甲状腺ガンの発症が認められています」と記載されていますが、これは「多発症」ではなく検査を増やしたことによる「多発見」です。団体が主張する内容は、国連科学委員会報告書の内容に反した見解です。

・「(公的な検査は)事故当時ゼロ歳から18歳だった子どもを対象にしており、事故後に生まれた子どもを対象にしていません。汚染された地域に住んでいれば内部被曝が進行するのにもかかわらず、完全にそれを無視した内容です」とありますが、そもそも原因となりうるのは半減期が約8日のヨウ素131による被曝です。事故から7年にもなる現在の福島で、原発事故由来のヨウ素被曝による健康リスクはありません。

・「(子どもたちは、)汚染されていない物を食べることで、体内被曝の進行から解放され、抵抗力、免疫力をつけることが可能なのです」とありますが、福島で暮らしている人たちの被曝量が内部外部ともに、世界の一般的な地域とかわらないほどに低かったことは、すでに数々の実測データから明らかになっています。避難区域外の福島の空間線量や食品中の放射線リスクは、他の一般的な地域とまったく変わりません。福島を「汚染された地域」とみなし内部外部被曝量が高まるかのような言説は、そのような事実を完全に無視したものであるといえます。