韓国、福島近辺8県の水産物輸入を禁止

2018年3月12日

2011年の福島第一原発事故直後に、韓国は福島県近辺の農・水産物の輸入を禁止しました。その後、2013年9月になって、新たに福島県近辺8県(青森、岩手、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉)の水産物について、輸入を全面的に禁止する特別措置を発表しました。

この措置について、韓国首相官邸のスポークスマンは2013年9月6日、「(東電)福島(第一)原発から流出している大量の汚染水に対する世論の懸念が急速に高まっているため」と説明。これに対し日本政府の菅義偉官房長官は、「(日本は)厳格な安全管理をしており、検査結果が基準値を上回れば出荷制限をしている」としたうえで、韓国政府には「科学的根拠に基づいて対応してほしい」と述べました。

参考リンク

韓国が福島など8県の水産物禁輸へ、菅長官「科学的根拠に基づく対応を」(「ロイター」2013年9月6日)
https://jp.reuters.com/article/t9n0g900k-korea-fukushima-seafood-idJPTYE98500P20130906

主な問題点

・福島近辺8県の水産物を包括的に輸入禁止とする措置は、科学的な証明なく食品の安全を理由に輸入を禁止するものであり、WTO(世界貿易機関)の協定違反にあたります。

・科学的根拠に反する不当な忌避や差別行為を放置・肯定することは、国や地域、人間に対しても差別を拡大させるおそれがあります。それが政府によって大規模に行われることで、被害の規模も比例して大きくなります。

・多額の経済的損害が発生し、被災地復興の障害になっています。一例として宮城県でのホヤがあげられます。宮城県で養殖が盛んなホヤは、全生産量の70~80%が韓国に輸出されていました。韓国の禁輸措置によって、復興に向けて育てていたホヤは販売先を失い、2016年には最終的に7600トン(2015年の宮城県の養殖ホヤ水揚げ量は全国トップで約4,100トン)が廃棄処分されました。

参考リンク

韓国の禁輸が解けねば、今年もホヤが大量廃棄に(「日経ビジネス」2017年3月17日)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/279177/031600017/?n_cid=nbpnbo_twbn

経過

韓国の水産物輸入禁止措置に対して日本政府は、2015年6月下旬にスイス・ジュネーブでWTO協定にもとづく2国間協議を行ったものの立場の食い違いを埋められず、同年、日本政府は韓国をWTOに提訴しました。

2018年2月22日、WTOのパネル(紛争処理小委員会)は一審判決を発表し、韓国が実施している輸入禁止措置について、「恣意的、または不当な差別に当たる」と指摘。WTO協定に違反しているとして、是正を勧告しました。

韓国側はWTOの勧告に対して、「現行の輸入規制措置が解除されるわけではない」と強調。「政府はいかなる場合でも放射能に汚染された食品がわれわれの食卓に上ることがないよう、安全確保に全力を尽くす」として二審への上告する方針を決めたと発表しました。

参考リンク

日本「韓国の水産物輸入規制、WTOに提訴する方針」(「中央日報」2015年7月21日)
http://japanese.joins.com/article/422/203422.html

日本、韓国にWTO勝訴=原発事故後の水産輸入規制-各国・地域に影響も(「時事ドットコムニュース」2018年2月23日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018022300019&g=eco

福島水産物輸入禁止の韓国、1審で敗訴(「中央日報」2018年2月23日)http://s.japanese.joins.com/article/935/238935.html

韓国、WTO勧告で上訴へ「国民の健康保護のため」(「産経新聞」2018年2月23日)
http://www.sankei.com/economy/news/180223/ecn1802230046-n1.html

画像の出所

韓国の輸入制限は「差別」WTOが是正勧告(「0テレニュース24」2018年2月23日)http://www.news24.jp/articles/2018/02/23/06386341.html

情報の検証

韓国側が主張する「原発から流出している大量の汚染水に対する懸念」によって、事故直後以上に輸入基準を厳しくすることの科学的な合理性はありません。実際に流通する海産物は、国際比較でもきわめて厳しい日本の食品基準(100Bq/kg)をクリアしたものであり、内部被曝によって健康に害を及ぼすものではありません。

韓国は2018年2月現在も、福島県を含めた8県からの水産物の輸入を全面的に禁止する措置を継続していますが、福島県沖の海産物からさえも2015年4月の調査以降、韓国よりも厳しい日本の100Bq/kgという基準を超える検体は1体も見つかっていません。