「原発事故関連死」と韓国大統領の発言

2017年11月11日

2017年619日、韓国大統領文在寅(ムンジェイン)氏が、福島第一原発事故をめぐって、「20163月現在、1368人が死亡し、被害復旧に総額220兆ウォン(約22兆円)という天文学的な予算がかかるそうだ。事故後、放射能の影響による死亡者やがん患者の発生数は把握すら不可能な状況だ」と語ったと、「朝日新聞」によって報道されました。

情報の出所

「朝日新聞」2017年79
http://www.asahi.com/articles/ASK6M3CWZK6MUHBI00M.html

経過

・東京新聞「文氏はどこから数字を引用したのか言及していない」(ライブドアニュース2017619日)news.livedoor.com/lite/article_detail/13224909(現在は「提供者の都合により、削除されました」と表示され、概要のみの掲載になっています。)

・朝鮮日報日本語版「福島第一原発事故で1368人死亡?文大統領の脱原発演説に専門家から異論」2017620
azian.click/韓国/29515(現在閲覧できないため、リンクは転載先です。)

1368人死亡」は、昨年36日の東京新聞による報道だという。ソウル大学の朱漢奎(チュ・ハンギュ)教授は「記事に出てきた死者の95.5%は、避難後にストレスで健康が悪化した60歳以上の人物で、67%80歳以上の高齢者だった。福島の原発事故現場において、放射線被ばくによって死亡した人は一人もいない」と語った。

・朝鮮日報日本語版「『福島第一原発事故で1368人死亡』文大統領発言に日本政府が抗議」2017628
www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2017062801271

日本政府は27日、東京の韓国大使館に「正確な理解もないまま発言した内容であり非常に遺憾」と正式ルートを通じて伝えていたことが分かった。時事通信が報じた。

1368人という数字は韓国の産業通商資源部(省に相当)が昨年3月、東京新聞の記事に基づいて大統領府に報告していたものだった。

(韓国)産業通商資源部は「原発事故関連死」を「原発事故による死者」と間違って報告したことについて「弁解の言葉もない」とコメントしている。

情報の検証

1368人という数字は、震災関連死の中から、東京新聞が「原発関連死」として独自に認定した数字です。被曝を原因とした死者数ではありません。

本紙は震災関連死のうち、原発事故での避難の影響で病気が悪化するなどして死亡した人の数を、各自治体に弔慰金申請書類などを調べてもらい、原発関連死として集計している。「東京新聞」201636

また、大統領の「死亡数やがん患者の発生数は把握すら不可能な状況」との発言に具体的な根拠はありません。