廃車画像を用いて「原発事故が奪った村」
2018年3月23日
2015年11月20日発売の総合月刊誌「DAYSJAPAN」(12月号)において、「どこが収束か 事故後5年目を迎える福島 原発事故が奪った村」というタイトルの記事に、「人々が乗り捨てて逃げた車が、4年半の歳月を経て草に覆われていた」というキャプション付きの現場写真(撮影場所は双葉町だとされています)が掲載されました。
※写真および記事はともにアロカディウス・ボドニエンスキー氏によるものです。
経過
インターネットを中心に多くの批判が寄せられていたところ、2016年2月2日、同誌発行人の広河隆一氏は写真キャプションについて、同誌公式ホームページ、フェイスブック上で以下のように経緯を説明、弁明しました。
写真は写真家(本記事を執筆したアロカディウス・ボドニエンスキー氏;編集部注)のホームページで見つけたが、キャプションを依頼したところ、「掲載決定が締切ギリギリだった」ため、写真家から「編集部で写真家のホームページを参照して書いてほしい」という流れになった。
写真家の英語版ホームページには、「I guess that the cars became contaminated and then were abandoned by the residents. A moment later the deep of the dosimeter confirms this.(車が汚染されたため住民が放棄したと思われる。それを証明するように直後に測定器が鳴り響いた)」とあった。編集部は「思われる」の部分を取り除き、「人々が乗り捨てて逃げた車が、4年半の歳月を経て草に覆われていた」と断定的に表記した。
また地名表記については、写真家のホームページにあった「FUTABA」という記載から双葉郡双葉町だと判断した。
「DAYS JAPAN」フェイスブック(2016年2月2日)https://www.facebook.com/daysjapan.net/posts/1017124921660027
情報の検証
実際の撮影場所は双葉町ではなく富岡町です。いずれにしても「村」ではありません。2009年に撮影された震災前の航空写真(下掲)を確認すると、すでに車はそこに置いてあり、その場所が廃車置場であって、道路上ではないことが確認されます。すなわち道路上に「人々が乗り捨てて逃げた車」ではありません。ちなみに、アロカディウス・ボドニエンスキー氏による写真には、道路は写されていません。