「被災地の子供の葬列デモ」と「原発ガッカリ音頭」
2018年1月18日
福島第一原発事故以降、脱原発を求めるデモが日本各地で活発に行われました。その脱原発デモのなかで、被災地への誹謗中傷ととれる事例が見られました。代表的な例が「葬列デモ」と「原発ガッカリ音頭」です。
葬列デモとは?
2011年9月1日および10月18日、大阪市にて「「命を守るデモ」実行委員会」および「原子力行政を問い直す宗教者の会」により「葬列デモ(葬列予報)」が行われました。このデモでは、原発の危険性や被災地からの避難(移住)、震災遺物の焼却拒否を訴えるほか、僧侶が先導するなか喪服に身を包んだ参加者が子ども用の棺を運びました。
見たくない現実を 『葬列予報』という形で表すことによりこの厳しい現実と向き合い
子ども達が被曝の危険性にさらされていることに
みなさんの関心が集まり 一人でも多くの子どもの命を守れたらと願います。
(主催者のブログより)
参考リンク
大阪での葬列デモのまとめ – Togetter
https://togetter.com/li/205615
原発ガッカリ音頭とは?
2012年5月5日、反原発グループ「TwitNoNukes」が「原発全基一旦停止祝いカウントダウンパーティー」を代々木公園にて開催しました。当時唯一稼働していた北海道電力泊発電所が同日に営業運転を停止することを記念し、再稼働阻止や全原発の廃炉につなげることを訴えるものでした。このなかで、ミュージシャンの「ランキンタクシー」氏により、「原発ガッカリ音頭」というタイトルの歌が歌われました。
明るい未来のエネルギーなんて
甘い言葉に踊らされ
大事なふるさとサヨウナラ
いくら泣いてもいくら泣いても後の祭り
札束の山に目がくらみ
豊かな暮らしと勘違い
差し出しちゃった差し出しちゃった
子供の笑顔
ドカンと爆発ドカンとねァ
ドンガラガッタ地震もドカンとね
原発危ない原発いらないオヤメナサイ
(歌詞より一部抜粋)
参考リンク
ランキン・タクシーの原発がっかり音頭への反応 – Togetter
https://togetter.com/li/304109
画像の出所
葬列デモ主催者ブログより
http://news.fatalbackground.org/?eid=1252218
問題点
問題点を整理すると、ふたつに共通するのは
・首都圏のためのインフラとして造られた原発の受益者であった立場の人たちがその事実を無視し、自分たちのエネルギー需要を支えてきた地域の人たちに対して一方的に侮辱していること
です。
葬列デモについては、
・当事者の意志と尊厳を無視して、生きている人間を勝手に死んだこととして扱ったこと
・災害の被災者を政治的活動のための道具としたこと
・福島で被曝を原因として人が死ぬという確定的な情報やエビデンスがないにも関わらず、これを断定的なものとして風説の流布をしたこと
などの問題点が指摘できます。
原発ガッカリ音頭については、
・沢山の死者を出した地震も含めた災害全体を揶揄・冒涜していること
・被災者が金に目が眩んだ賤しい人間であるかのように中傷していること
・被災地が原発のリスクを理解できなかった愚鈍な人間ばかりであるかのように中傷していること
・故郷に二度と戻れないかのような事実と異なる不正確な断定を行っていること
・揶揄や中傷を音頭に合わせて騒ぐネタに仕立てて、政治活動のために消費していること
などがあげられます。
経過
・葬列デモの主催者とされる人物のブログには、数多くの賛同・批判のコメントが集中しました。
10.18 デモ報告 | FATE
http://news.fatalbackground.org/?eid=1252218
・10月18日のデモ後、「葬送デモへの批判に対する応答」として主催者S氏、および参加した仏教僧侶のコメントが出されています。
http://web.archive.org/web/20120130231615/http://nonuke-savelife.tumblr.com/post/12855881354
http://web.archive.org/web/20120130220843/http://nonuke-savelife.tumblr.com/post/13812857238
※「命を守るデモ」実行委員会のサイトは2011年11月の上記投稿を最後に更新が止まり、2018年現在閉鎖されています。
・葬列デモには、震災遺物の広域焼却に反対している阪南大学准教授の下地真樹氏が主催者として参加しており、「あのデモをやったからこそ、本当の意味で危機感を腑に落とせた。今の自分の活動の土台です。何も後悔はありません」とコメントしています。
モジモジ先生、壮烈!いや葬列デモ? – Togetter
https://togetter.com/li/413833
・類似の事例として、実行されなかったものの、芸術家の若野桂氏によって「被曝仮装デモ」が提案されました。
最近盛り上がってる反核デモですが、マイケルジャクソン「スリラー」的な「被曝患者~奇形児コスプレ」で行ってみようかと思います。1000人くらい歩いていたら小さい子は泣いちゃうかも知れませんが。
・ランキンタクシー氏は、2番の歌詞について「自虐の詩である」と弁明しています。
ランキンタクシーさん @rankintaxi 「原発がっかり音頭」についてのツイート – Togetter
https://togetter.com/li/300542
※「原発ガッカリ音頭」の歌詞には「明るい未来のエネルギー」とありますが、これは双葉郡双葉町に掲げられていた標語の一部です。作詞者の意図が自虐であったと弁明しても、「大事なふるさとサヨウナラ/いくら泣いても後の祭り」が、福島第一原発立地地域の被災者を指していると解釈されるのは当然です。
・「原発ガッカリ音頭」は2017年12月現在、iTunes にて配信されています。
https://itunes.apple.com/jp/album/yuan-fagakkari-yin-tou-single/id530951849
情報の検証
原発事故以降、福島第一原発由来の放射線被曝により亡くなった方は1人もいません。